こんにちは。JPHです。
2019年はベントレー創業100周年という事で、世界中で祝賀イベントや記念モデルが発表されるなど、ベントレーにとって素晴らしい1年になりました。
100年繋がりと言えば、自動車業界でも「100年に一度」というフレーズが頻繁に掲載され、CASE(Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化))など、大きなムーブメントに備えよ的な話があちこちで語られた一年でもありました。
各社のトレンドも、ハイブリットや電制シャシーが主流で、電気電気の大行進、、、。
前振りになるのですが、ベントレーはハイブリッドのコンセプトカーを2014年に発表しておりまして、ベースとなったのはなんと Mulsanne!
クラシカルなV8エンジンと先端技術のモーターの組み合わせという、何とも極端な提案で驚いてしまいました、、、。
<2014年に発表された、Mulsanne Hybrid Concept>
明けて2020年。
先日ベントレー社より、Mulsanne の生産終了と、それに伴う、世界限定30台の最終特別モデル(=限定車名 Mulsanne 6.75 Edition) が発表されました。
今回は、ベントレーの旗艦というテーマでお話ししようと思います。
<Mulsanne 6.75 Edition>
Mulsanneは、2009年8月のペブルビーチのコンクールデレガンスにて初めてお披露目されました。
このペブルビーチ後の初秋でしたが、翌年2010年からの販売開始に先駆け、英国・CREWEの本社にて現車を見る機会があったのですが、その時のエピソードをお話しします。
会場に入ると、デザイン、シャシー等、テーマに分けて部屋が用意されており、各ブースにて開発に携わったエンジニアからのプレゼンテーションを受けたのですが、確か最後の回がエンジンだったと思います。
当日まで仕様の詳細が分からず、公開された資料と言えば「ベントレー・8リットル」と一緒に映っている公式写真のみ。
逆に情報が不足しているからこそ、否が応にもエンジンに関しての想像(妄想?)が駆り立てられる訳ですが、、、さて?
折しも同年2009年4月に、ロールス・ロイスのGHOST が上海モーターショーで発表され、こちらのエンジンは新設計の「DOHC 6.6リッター ツインターボ V12気筒」。
ロールスにとって初の量産車となったモデルですが、とても静かでスムースなエンジンのフィーリングに大いに感銘を受けました。
当然、Mulsanne はこれを上回るスペックであって欲しいですし、具体的には最新設計のマルチシリンダーへの期待という事になるのですが、何よりこの「ベントレー・8リットル」との関連性が想像力を掻き立てる訳です、、、。何かメッセージが隠されている!?
<これがベントレー・8リットルです。>
丁度この頃、「ブガッティ・ヴェイロン用 W16・8リッター」の自然吸気仕様が開発されているという噂もあったので、「あー、ここで8リッター繋がりかぁ、、。」 「いよいよ前代未聞のスペックを持つ、ベントレーの旗艦の誕生か!」 と興奮したのを今でも覚えています。
でもふたを開けてみると、、、、
◆「ユーロ5(=新排ガス規制)の基準をクリアするべく、大幅に改修された、OHV / 6,750cc V型8気筒」
◆「1930年のW.O ベントレーの設計による8リットルモデル以来、80年ぶりにベントレーモーターズにより独自設計された旗艦モデルである。」
というアナウンス、、、。
ここでようやく8リッターとの「関連性」が明かされる事になりましたが、「そっちかよー、、、。」とちょっぴり落胆したのを覚えています。(笑)
自分にとって初対面のMulsanne は、このエンジン話が思い出深いのですが、実はこのクラシカルな形式のエンジンには、長い歴史に育まれたサクセスストーリがあるのです。
Mulsanneの前作である、ARNAGEシリーズには当初、「BMW製 4.4リットル DOHC V型8気筒」のグリーンレーベルと、少し遅れて投入された「OHV 6.75リットル V型8気筒」のレッドレーベルというの2つのモデルがラインナップされていました。
<ARNAGE Green Label>
<ARNAGE Red Label>
この2つのエンジンが用意された背景には諸説ありますが、(Wikipedia 記事参照) 販売面において、明暗が分かれる事になりました。
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グリーンレーベルは、新設計となるマルチバルブを備えたツインターボでしたが、従来のオーナーには不評で、通常走行域においてのトルク感の細さが、その理由の一つだったと言われています。
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これに対して、後日投入されたレッドレーベルは、使い慣れたエンジンの改良版故に、多くのオーナーが好む分厚いトルクを介しての重厚な乗り味を提供。
これが好調を博し、結果的に販売数の回復に寄与することになりました。
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結果、このレッドレーベルのエンジンが生き残ることになり、ARNAGE R、ARNAGE T、BROOKLANDS、AZURE とシリーズが拡大されて、最終的に延べ11年間も生産が続いていくことになるのです。
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つまり、技術的な側面や政治的な背景もありますが、一番重要なセールスという観点において、このトルクフルなエンジンが受け入れられたという事実が、Mulsanne 誕生の際にも、「その心臓部には必然的にこの形式のものが継続搭載される事になったのでは?」と今は思っています。
ベントレーの定義する、自身の旗艦の定義は「OHV / 6,750cc V型8気筒」で正解だったのです。
本社CREWE工場では、W12気筒(コンチネンタルGTシリーズ、フライングスパーシリーズ等)と、Mulsanne の生産ラインは明確に分かれています。
後者は、作業工程数の多さや、装飾に関して高度な技術が要求されることから、専属のベテランスタッフが従事しています。
このユニークなエンジンは、熟練スタッフによって一基一基で手作業で組まれ、最後にその責任者のサインが入ったプレートがインテークカバーに装着されて完成となります。
Mulsanne の最大の「価値」と言えば、その専用設計性に尽きると言えるでしょう。
この「OHV 6,750cc V型8気筒」エンジンはこのモデル専用となり、シャシーもベントレーの他モデルと一切の共用をしていません。
量産乗用車において「1エンジン=1シャシー(モデル)」の生産を実現できているのは、世界広しと言えど、このMulsanne だけなのです。
「量産=販売増」を目指すと、1つのシャシーから如何に多くのモデルを派生させる事が出来るかどうかが、今の基本的な考え方です。
例えば、セダン / クーペ / オープン / SUV / という多種多用なボディ形式の生産が可能なように、柔軟なプラットフォームを設計をする事が正義であり、コスト・生産効率を考えると、この思想が至極当然の概念になると言う訳です。
「フォルクスワーゲン」、「BMW」、「フィアット・クライスラー」に代表される巨大グループの傘下の一員として存在しているいろいろなラグジュアリーブランドは、その「量産性」に沿って用意されたシャシーを使いながら、グループ内の他ブランドと多様な部品を共用することにより、共生できていると言うのが現実です。
別の言い方をすれば、何物にも共用しないという Mulsanneのこの生産における非効率性は、甚だ時代遅れの感もありますが、これが嗜好品としての価値・ステイタスを高める要因になったとも言えるかもしれませんね。
ベントレーは、創業当時よりいろいろなレースに参戦し、スポーツカーメーカーとして名を馳せました。
その伝統とは、常にエンジンを感じながら、ドライバーズカーとして運転を楽しめるという事だと思います。
Mulsanneの 2,770㎏ という巨体を軽々と加速させるこのエンジンのパワーは、537PS。(=Mulsanne Speedの場合)
特筆すべきはトルクで、実に 1,020Nmを誇ります。大排気量にツインターボで過給をするので、パワーがあって当然かと思われがちですが、エンジンはパワーよりトルクが重要で、加えて言えば、如何に低速域から最大トルクを発生させるように設計するかが、エンジニアの腕の見せ所です。
Mulsanne独特の、このOHVという低中回転型のエンジン形式は、マルチシリンダー(DOHC)に対してより低速域において、トルクを有利に発生させることが出来ます。
実際、アイドリングを少し超えた1,750rpmの低回転で最大トルクとなりますので、元々が大排気量・低中回転型のエンジンという構造とも相まって、思いのままに気持ち良い加速・巡航を実現します。
車重は2.7tを超える重量級なのですが、どんな場面でも俊敏な運動性を味わえることに、きっと驚かれることでしょう!
因みに量産車で最大トルクが「1,000Nmを越える」ランキング第1位はMulsanneです。(2位以下は、メルセデスベンツの「S65」シリーズでした。この2車種だけ。)
全長5.6m弱の大きさでも、一番快適で楽しいのは運転席です。
青信号でスッと加速し、遠くで静々回るエンジンの鼓動を感じながら交通の流れをリードする。
市街地の交差点に差し掛かり減速し、ゆっくりステアリングを切って曲がっていく。そして前方の景色が開けたところで、再度加速していく。
ステアリングに伝わる路面の状態、ウィンカーの作動音、シフトレバーのクリック感などの何気ない操作。
Mulsanneはそのすべての感触が上質です。
今後二度と味わえない、「新車で買える」モダンクラシック。今だからこそ、Mulsanneに乗る意義があるのです。
冒頭に紹介した、最終限定車を改めてご紹介。
◆モデル名;Mulsanne 6.75 Edition by Mulliner
◆世界限定 30台
この「OHV / 6,750cc V型8気筒」は、2020年で60年を迎えました。
1960年以来、長らくこのエンジン形式を継承し、時代に沿うべく弛まない改良がなされてきましたが、その節目の「還暦」の年にいよいよ生産が終了となります。
世界中で現在生産されているV8エンジンでは、最長寿となるそうですが、もう二度と同様な車が出てくることはありません。
燃焼機関の最後の名器。
この限定車を含め、私たちは心を込めて、この逸品をお届けして参ります。
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