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Cornesスタッフからのニュース

May 4, 2017

【特別寄稿 ROSSO誌 西山編集長より】Aventador S デビューに向けて

こんにちわ。JPHです。

 

先日の「Aventador S ファーストドライブ&アンコールフェア」は盛況のうちに終了となりましたが、いよいよ本格的に日本の路上にデビューを果たすこのフラッグシップモデルに向けて、ROSSO編集長・西山氏より特別寄稿を頂きました。

 

プロフェッショナルなジャーナリストならではの深い造詣と、幅広い情報は、改めてランボルギーニの素晴らしさを感じさせてくれる内容となっています。

しばし、新生 Aventador S とはどういうモデルなのか。じっくりと御拝読頂ければ幸いです。

 

ではでは。

 

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<特別寄稿 ‐ 西山嘉彦氏より>

 

2017年1月中旬、アヴェンタドールSの国際試乗会が行われたのは、スペイン・バレンシア郊外にあるリカルド・トルモ・サーキットでした。

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ちなみに、アヴェンタドールLP700-4が登場したときは、ローマ近郊のヴァレルンガ・サーキット、そしてアヴェンタドールLP750-4 SVは、スペインのカタロニア・サーキットで走らせた経験があります。

 

スーパー・ヴェローチェと名のつくだけあって、見た目もアグレッシブに変化を遂げたSVは、そのいかつい見た目とは裏腹に、非常に洗練されて、なおかつ運転しやすい仕上がりだったのが印象的でした。

 

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フロントとリアのバンパー形状は、まったく異なるものになっていましたが、そこは当時のチーフデザイナーであったフィリッポ氏の手腕もあって、プロポーションに破綻は一切見受けられず、オリジナルとはまた別のベクトルで、ランボルギーニを表現していました。

 

実は、アヴェンタドールLP700-4のときはレヴェントン、SVのときはアヴェンタドールJというように、デザインにおける前振りがありました。そのため既視感があり、登場したときから素直にカッコイイと受け入れられたのだと思います。ランボルギーニも特別限定モデルやコンセプトモデルで、市場の反応をフィードバックしていたと考えてもよいでしょう。

 

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さて、Sはどうでしょう。

ランボルギーニ・リアホイール・ステアリング(LRS)やランボルギーニ磁気粘性サスペンション(LMS)の採用などの技術的なことばかりが取り沙汰されていて、外観の変更に関してはあまり事前に注目されていませんでした。

 

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そもそも、クルマはデビュー当時のデザインが、もっともデザイナーのコンセプトに忠実で美しいという意見もあります。ランボルギーニでいえば、カウンタックLP400などがその代表的なクルマ。後付けのデザインは、シンプルでピュアなボディラインを損なうことが多々あります。正直に言うと、アヴェンタドールSも少なからずそうなるのではないかと懸念していました。

 

しかし、それはまったくの杞憂でした。

 

ランボルギーニの新たなチーフデザイナー、ミチャ・ボーカー氏は、Sの登場により、前期モデルとなったアヴェンタドールが古臭く見えてしまうようなことはなく、そしてアヴェンタドールSにとってつけたようなコスメを施すこともなく、見事なラインでアヴェンタドールに新たな息吹をもたらしたのです。彼に単独インタビューした内容を少しここでご紹介しましょう。

 

──完成されていたアヴェンタドールのデザインに、手を加えることにためらいは?

「確かに大きなチャレンジでした。伝説的なブランドの歴史的なクルマをデザインするということは、デザイナーにとって非常に光栄なことであり、まさに夢のような仕事でした。今までのものからインスピレーションを受け、さらにモダンなデザインへ導こうと心がけました。」

 

 

──前任のフィリッポ氏から、カメムシをモチーフにしたと直接聞きました。アヴェンタドールSも、自然からなにか着想を得たのでしょうか?

 

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「私もフィリッポと話して、バグ(カメムシ)からイメージを受けたと聞いています。ルーフのイメージなどがそうですね。そしてこのSでも自然の物からイメージを受けています。私の中ではランボルギーニはとてもパワフルな動物、百獣の王であるライオンのイメージがあります。デザインにライオンの着想はありませんが、パワフルで力強いものからのインスピレーションが必要でした。デザインスケッチの初期の段階では、スネークの牙からイメージし、最終的にフロントバンパーのデザインに反映されています。また、シャークのイメージでもあります(確かに、フロントバンパーの牙に見える部分は、サメの胸びれのようにも見える)。

 

 

 

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このほか、新しいエグゾーストのデザインは、宇宙船のイメージですし、戦闘機からもデザインの着想を得ています。」

 

 

──技術的な要件で、デザインが制約されている部分はありますか?

「今回、ランボルギーニ・リアホイール・ステアリングなどの新技術の搭載で嵩んだ重量を、どこかで清算する必要がありました。そのため、エグゾーストの数を3本にしたり、Cピラーの可変フラップを固定式に変更したりしています。そしてそれらは軽量化とともにアヴェンタドールSの性能をアップさせることにも成功しています。すべてのデザインは必ず機能を追求したものでなければならないのです。」

 

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──一番影響を受けたクルマは?

「ランボルギーニは夢のクルマでした。かつてはポルシェで仕事をしていましたが、フィリッポ氏がどんな仕事をしているのか、常にモーターショーなどでは最新モデルやコンセプトモデルをフォローしていましたよ。その意味では、ランボルギーニにかなり影響されていたと言っていいでしょうね。(笑)」

 

 

──アヴェンタドールSは、初期のカウンタックみたいですね?

「ええ、リアのホイールアーチやボディサイドのラインなど、まさしくカウンタックから受け継いだものです。ガンディーニがデザインしたイエローのプロトタイプのカウンタックは、私にとってもっとも大好きな、永遠のマスターピースなのです。」

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このインタビューを読んでいただいた後にアヴェンタドールSの姿を再度見て頂くと、確かにカウンタックからの正統な後継であることがすぐに分かるでしょう。

 

大胆に、しかし繊細に変更が加えられたフロントバンパー部は、あたかもこれが最初からのデザインであったかのような見事な調和をみせています。

 

デザインはより複雑になっており、前期モデルに比べ有機的な印象に。リアホイールアーチの形状や固定式になったCピラー後ろのエアインテークなどもあいまって、カウンタックからのDNAを色濃く感じとることができます。この場合、件のエアインテークはボディ同色の方が、よりそれらしく見えます。

 

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さて、その走りはどうか?

アヴェンタドールLP700-4、SVと国際試乗会のサーキットでドライブした経験からすると、もっともハードに感じたのはLP700-4の時でした。

 

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その時の経験を基準にSVをドライブしたときに、「あれ、期待していたのとは反対に、とてもドライブしやすくなっている」と素直に感じました。それは、散々試乗した日本の公道でも同じ印象。

 

そして今回のSはといえば、SVを少しだけマイルドにした印象。それはエキゾーストのサウンドや、インテリアの素材とフィニッシュなどから得られた印象です。

 

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唯一大きく違ったのは、LRSによる低速での取り回しのしやすさでしょうか。これは、日本国内での運転してみると、駐車場に停める際やいろいろなシーンでとてもよくその違い──というか恩恵を受けることになるに違いありません。

 

アヴェンタドールLP700-4とウラカンを走り比べてみると、ウラカンの方が回頭性がよくて扱いやすいのですが、Sは、その中間といったところでしょうか。

サーキットを走っているとLP700ー4よりも、さらにボディが小さく感じられます。この感覚が、日本の市街地でどのように変化するか、非常に楽しみです。

 

外観の変更に伴い、コクピットにも変更が加わりました。最大の変更点はメーターパネルが変わったということ。LP700-4とSVはそれぞれまったく異なるデザインのメーターパネルで、それぞれの性格を一目で現している部分でもありました。

 

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Sはウラカンのように、ひとつの液晶パネルになり、走行モードなどによって表示が変わるものになりました。

従来のLP700-4のメーターパネルのデザインを踏襲し、さらにコルサ・モードではSVのようにタコメーターが強調された表示を採用しています。ただし、ナビ画面は従来通りセンターコンソール上にあります。造形的には、LP700-4のメーターパネルが1番手の込んだデザインであったともいえるかもしれません。

 

 

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そして赤い蓋が特徴的なエンジンスタート・ストップボタンの上部にある走行モード切り替えスイッチに「EGO」の文字が追加されました。実は、これがアヴェンタドールSのハイライトと言っていいかもしれません。

 

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EGO──「自我」の意味するところは、自らの意志によって、アヴェンタドールの走行特性を選ぶことができるというものです。

 

これまでは、ストラーダ、スポーツ、コルサという、あらかじめセッティングされた3つのモードしか選ぶことができませんでした。

それがこのEGOモードでは、「パワートレイン」、「ステアリング」、「サスペンション」の3つのを設定をそれぞれ個別にストラーダ/スポーツ/コルサの3つから任意に選択し、設定できるようになったのです。

つまり、サスペンションは1番ソフトなストラーダ、ステアリングはスポーツ、パワートレインはコルサに、と言った具合に。

 

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この実現には、LMSを採用したことが大いに関係しています。

LP700-4のサスペンションは、減衰力を可変することができませんでした。

最初期のものが最もハードで、その後にソフトな仕様も用意されたようです。

これは裏を返せば、ランボルギーニが理想とするアヴェンタドールの走行セッティングを3つのシーンで用意したということでもあります。

しかし、ランボルギーニが用意した3つモードでは満足できないというオーナーもいるでしょう。オーナーがどのような道で、どのように走るのか、そしてドライビングスキルも千差万別。カスタマーが感じる気持ちよいドライビングを実現するために、たった3つのモードでカバーするには無理があるのも当然。

そのため、3×3×3通り(27パターン)の組み合わせから、自分がドライビングするシーンで最も最適なモードを選べるようになったというわけです。

 

 

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これが、EGOモードというわけです。しかし、LP700-4のオーナーもご安心下さい。ランボルギーニの開発とテストドライバー陣が、ベストと考えるセッティングで速く走ることができるよう、自分のスキルをあわせるという楽しみが残されています。つまり、ランボルギーニの思想は、ここに集約されているのですから。

 

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Sのオーナーになった方も、まずは、ストラーダ/スポーツ/コルサのモードを試してみて、そこから自分にあったセッティングを探ってみるとよいでしょう。

 

リカルド・トルモ・サーキットからバレンシアの市街地までは風光明媚なワインディングロード、そして市街地ではちょっとした交通渋滞に巻き込まれながらの試乗でした。それほど時間的な余裕もなかったため、公道ではストラーダ/スポーツのみのモードを試してみたのですが、LRSの恩恵は私のような一般的なドライバーにとっては、サーキットより公道の方が大きいかもしれません。

 

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120〜130km/hを境に、高速域では後輪は前輪と同位相方向に最大1.5度、低速域では逆位相方向に最大3度のステア行ってくれるので、120km/h以下でワインディングを流している時のイメージ通りのラインをトレースする心地よさ、160km/h以上で高速道路をレーンチェンジするときの安定感、そして何より、車庫入れの際に小回りが効くようになった事実、これらの恩恵は全体としてアヴェンタドールSとの心理的距離を縮めるものとなります。

 

 

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見た目も調和の取れた美しさを持つアヴェンタドールSは、ドライブしても感覚にフィットして身近に感じられることから、ガレージの住人としても永い蜜月を送ることができるでしょう。

 

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自然吸気の12気筒エンジンをリアミドに搭載するクルマそのものがすでに希有になっている現在、アヴェンタドールSは、われわれにとって新車で手に入れることができる貴重な存在。愛車として迎え入れて後悔のない1台と断言していいでしょう。

 

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May 4, 2017